大学生が統合失調症になったら?リスクと対処法を解説します
統合失調症とは、幻覚や妄想といった「陽性症状」と、意欲の低下や感情の平板化といった「陰性症状」が現れる精神疾患のことです。
統合失調症は、100人に1人がかかるといわれています。とくに、10代から30代くらいまでの間に発症しやすい傾向にあるため、大学生の方が発症するのは珍しいことではありません。
もしも大学生が統合失調症になってしまったら、どのように対処すればいいのでしょうか。本記事では、大学生の統合失調症について解説します。
大学生は統合失調症になりやすい年代の一つ
統合失調症は、感情や思考がまとまりにくくなる精神疾患です。明確な原因はまだ明らかになっていませんが、脳内の神経伝達物質のバランスが乱れることで発症すると考えられています。
統合失調症はさまざまな年代で発症する病気ですが、とくに10代から30代の思春期~青年期の期間に発症しやすいといわれており、大学生の頃もその時期に含まれます。
一橋大学保健センターが行った平成26年に行った調査によると、全国の統合失調症の総患者数は77.3万人であり、そのうち2.7万人が15~24歳の患者であることがわかりました。
15~24歳の人口を1,220万人とすると、15~24歳の統合失調症患者率は「2.7万÷1,220万=0.2%」。2021年度の大学生総数は約263万人だったので、統合失調症を患っている大学生は「263万✕0.2%=5260人」であると理論上では推測されます。
なかには、統合失調症にかかっていても自覚のない方、受診をしていなくて診断を下されていない方もいることでしょう。このように統合失調症に罹患していてもその事実に気づかず、生きづらさを感じて悩む大学生も少なくはありません。
大学生が統合失調症になったら
もしも大学生が統合失調症になったら、どのように対処すればいいのでしょうか。
ここでは、心に留めておきたい2つの対処ポイントを紹介します。
大学に伝える
「統合失調症に罹患している」と、周囲の友達や親に打ち明けることに抵抗感を抱く学生は多いかもしれません。しかし、今後も自分らしく大学生活を送るためには、周囲のサポートが不可欠です。
とくに、大学には発症の事実を伝えておくことを推奨します。なぜなら、大学に病気のことを伝えることで、授業において一定の配慮をしてもらえる可能性があるためです。
独立行政法人 日本学生支援機構によれば、実際に大学では精神障害に学生に対して、以下のような配慮を施した事例があると公表されています。
- 統合失調症の学生に対し、障害学生支援員が授業に同席したり、ソーシャルスキルトレーニングをサポートしたりした
- 統合失調症の学生に対し、一人で過ごせる空きスペースを用意した
- 統合失調症の症状について全教員に共有し、講義において配慮した
たとえ学校生活に困難があっても、こういった配慮があれば通学を続けられる統合失調症患者は大勢います。「病気だから」と大学に通うことを諦めるのではなく、まずは信頼できる大人に相談してみることが大切です。
なお病状によっては、無理なく通学できるようになるまで休学して、しっかりと休養を取る必要があるケースもあります。一人で悩まず、大学や家族と話し合いながら今後の生活について考えることが重要です。
授業や課外活動よりも治療に集中する
統合失調症に罹患してしまった患者様にとって、課外活動は大きな負担となります。課外活動はできるだけ避けて、治療に集中しましょう。
とくにゼミやサークル、部活などに発病のきっかけがある場合は、しばらくは参加を避けたほうが安心です。
また、夜遅くまでの飲み会や旅行といった学友との交流も、統合失調症の方にとってはストレスになったり症状を悪化させる原因になったりする可能性があります。
こういったストレスの要因からはできるだけ距離を取り、体調を第一に考えて安静に過ごすことが大切です。
統合失調症の治療は長期間の通院や服薬を必要とするため、場合によっては課外活動のみならず、履修スケジュールにも影響が出ることもあります。通院と通学を両立したい場合は、日頃から無理のないスケジュールの作成を心がけましょう。
なお、統合失調症になった際の適切な過ごし方は下記の記事で解説しています。具体的な適切な過ごし方について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
統合失調症になった場合の適切な過ごし方は?社会復帰までの道のりも解説
大学生の統合失調症は自死に発展するケースも
統合失調症に罹患すると、幻覚や妄想による日常生活への支障、情動面の不安定や睡眠障害、不安障害、抑うつ感などが生じます。こういった症状が患者様の心と体を蝕み、自死へ発展するケースは珍しくありません。
自死というと「うつ病」を連想する方は多いかもしれませんが、統合失調症も自死と深い関連性があります。統合失調症は「陰性症状」としてうつ病と似た症状が現れやすく、気分の落ち込みや自殺念慮といった症状に注意が必要なためです。
統合失調症における自殺リスクは5%、自殺企図は25~50%といわれています。また、日本における大学生の死因第1位は1996年から継続して「自殺」であることがわかっています。
1985年から2005年の21年間で、精神疾患と診断された自殺学生は987人中186人であることがわかっており、そのうち36.0%が統合失調症に関連する疾患を抱えていました。
このデータからも、統合失調症の大学生が自死に至るリスクが決して低くないことはわかるでしょう。
患者様の自死を防ぐためには、ご本人が治療に専念するだけではなく、友人やご家族の見守りが欠かせません。周囲の方が協力して、患者様が安心して生活できる環境を整えてあげることが重要です。
大学生の統合失調症はいち早く治療することが大切です
勉強にアルバイト、課外活動と活動の幅が広がる大学生は、大きく環境が変化してストレスを感じやすい時期でもあります。心身の負担が増大して心と体のバランスを崩しやすい大学生の時期は、統合失調症の発症リスクに注意が必要です。
統合失調症と聞くと不治の病のように思われるかもしれませんが、適切に治療すれば、以前と同じような生活を送れる状態にまで回復することはできます。
しかし、早期回復には早期治療が欠かせないため、少しでも違和感を抱いたら早めに精神科や心療内科へ相談することが大切です。
銀座の精神科梅本ホームクリニックでは、統合失調症の患者様に対する在宅医療を提供しています。統合失調症に悩む大学生の患者様、お子様の体調が心配な親御様は、ぜひ当院までお気軽にご相談ください。