統合失調症

統合失調症は遺伝する?統合失調症以外の精神疾患が遺伝するかどうかも解説

統合失調症は遺伝する?統合失調症以外の精神疾患が遺伝するかどうかも解説

統合失調症とは、幻覚や妄想といった「陽性症状」と、意欲の低下や感情の平板化といった「陰性症状」が出現する精神的な疾患のことです。

100人に1人が発症するといわれている統合失調症ですが、その原因としてはさまざまなものが挙げられます。

精神病に限らず、病気の発症には「遺伝」が関係していると考えられていますが、統合失調症と遺伝には関係性があるものなのでしょうか。

本記事では、統合失調症が遺伝するかどうかについて解説します。「ご家族に統合失調症の方がいて不安」「自分の病気が遺伝しないか心配している」という方は、ぜひ参考にしてみてください。

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統合失調症は遺伝する?

結論から申し上げますと、遺伝的要因も統合失調症発症の原因のひとつだと考えられています。

一卵性双生児の場合、ともに統合失調症を発症する可能性は28%にものぼります。

また、統合失調症の患者様から産まれたお子様の発症率は、そうでないお子様の10倍まで上昇することが研究により明らかになりました。さらに、隔世遺伝の可能性も示唆されています。

ただし、親族に統合失調症患者がいるからといって、統合失調症を発症する可能性が高いかといわれると、医学的な観点では肯定できないのが事実です。先述した数値は統計上のものにすぎず、確固たる医学的根拠は存在していないためです。

統合失調症の発症には、生活習慣やストレスといった後天的な複数の要因が関係しています。遺伝子だけが原因で発症することはないため、ご家族に統合失調症の方がいたとしても、過度に心配しすぎる必要はありません。

統合失調症に関係するとされている2つの遺伝子

統合失調症の明確な原因はいまだ解明されていませんが、脳の神経に発達異常が生じているという仮説が有力視されています。

この神経発達には遺伝子が関わっているため、統合失調症を発症する可能性がある体質が遺伝するケースもあると考えられているのです。

ここでは、統合失調症に関係するとされている遺伝子について2つ紹介します。

シナプスに関する遺伝子

シナプスとは、脳の神経細胞同士をつないで情報を伝達する、記憶や感情と深く関係している組織のことです。

統合失調症の方は、シナプスの数が極端に減ることがわかっています。そのため、シナプスの数を維持する遺伝子に異常があると、統合失調症の発症リスクが高いと考えられているのです。

神経発達に関与する遺伝子

統合失調症の方は、脳の神経発達に関係するいくつかの遺伝子に変化が見られることも知られています。つまり、神経発達に関する遺伝子に異常が起きていると、統合失調症を発症する可能性が高まるのです。

なお、統合失調症になりやすい人には一定の特徴があります。こちらの記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。

統合失調症になりやすい人の特徴は?統合失調症の兆候も紹介

統合失調症以外の精神疾患は遺伝する?

統合失調症において、遺伝は数ある要因のうちのひとつでしかありません。それでは、他の精神疾患ではどうなのでしょうか。

ここでは、統合失調症以外の精神疾患と遺伝との関係性を解説します。

強迫性障害

強迫性障害とは、つまらないことであるとわかっていてもそのことが頭から離れず、何度も同じ行動を取ってしまう精神疾患です。「何度も手を洗ってしまう」「何度も戸締まりを確認してしまう」といった症状が例として挙げられます。

強迫性障害の原因は特定されていませんが、強いストレスや不安、もともとの性格、心理的要因などが複雑に絡み合って発症すると考えられています。遺伝的要因はひとつの要素に過ぎず、遺伝子のみが原因で発症する病気ではありません。

社会不安障害

社会不安障害とは、「人からどのように見られているのか」を過度に気にしてしまう精神疾患です。外出や発言することに強い不安や恐怖を覚え、発汗や震え、腹痛といった体調不良を引き起こします。少し前までは、あがり症や対人恐怖症と呼ばれていました。

社会不安障害の患者様は、神経伝達物質である「セロトニン」のバランスが崩れて神経が過敏な状態になっていると考えられています。その原因としては、人前で恥をかいたことがあるなどの「経験的要因」、人目を気にしすぎる「性格的要因」が挙げられます。

社会不安障害も遺伝的要因はひとつの要素に過ぎず、さまざま要素が複雑に絡み合って発症する疾患です。

てんかん

てんかんとは、突然意識を失ってしまう「てんかん発作」を繰り返し発症する病気です。脳の一部の神経細胞が突然異常な電気活動を起こすことによって生じますが、発作は一時的なもので、終わったあとは元通りの状態に回復することが特徴的です。

脳腫瘍や外傷後遺症等によって引き起こされるてんかんを「症候性てんかん」と呼び、それ以外の原因がわからないてんかんを「特発性てんかん」と呼びます。

てんかんは遺伝しないと考えられていますが、一部の遺伝子が関係していたり、「発作の起こりやすい体質」を受け継ぐことがあったりすることが研究で明らかになっています。

うつ病

うつ病とは、憂鬱な気分や気持ちの落ち込み、意欲の低下などさまざまな症状を引き起こす精神疾患です。食欲や性欲の減退、睡眠不足、胃腸の不調といった身体的な症状が現れることもあります。

うつ病も発症の原因はまだ解明されていませんが、精神的なストレスや身体的なストレスが関係していると考えられています。辛い経験だけではなく、結婚や昇進といった喜ばしいはずの環境変化によってうつ病が引き起こされることも多いようです。また、体の病気や薬の服用によって発症するケースも多々あります。

うつ病においても、遺伝的要因は多く存在する要因のひとつにすぎないため、過度に気にしすぎる必要はありません。

統合失調症は予防が大切です

統合失調症の原因は解明されていませんが、遺伝的要因は原因の一部に過ぎず、ストレスや環境といった複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

遺伝子について不安を抱いて思い悩むよりも、できる限り過剰なストレスを抱えないようにすることのほうが大切です。統合失調症に限らず、ストレスはいろいろな病気を引き起こす大きな原因のひとつであるためです。

統合失調症を発症すると、さまざまな症状により日常生活がままならなくなるおそれがあります。しかし早期に治療を行えば、以前と同じような生活を送れる状態に回復することは可能です。

万が一、ご家族やご自身に統合失調症の兆候が見られたら、すぐに精神科を受診して治療を行いましょう。

統合失調症の具体的な初期症状については、下記の記事で解説しています。早期治療のためにも、しっかりと目を通しておきましょう。

統合失調症の初期症状として見られる症状を解説します

統合失調症の疑いがあれば精神科を受診しましょう

脳内の神経伝達物質の異常によって、統合失調症は発症すると考えられています。

統合失調症の原因はいまだ解明されていませんが、2つの遺伝子異常が発症リスクを高める可能性があることが示唆されています。

ただし、統合失調症を含む精神疾患は、ストレスや環境といった外的要因が原因になって発症するケースがほとんどです。遺伝子による影響だけで発症することは考えられないため、過度に不安に思う必要はありません。

統合失調症は遺伝子が引き起こす不治の病ではなく、適切な治療により以前の生活が送れるまでに寛解できる病気です。回復のためには早期治療が欠かせないため、少しでも統合失調症の疑いがあれば早めに医療機関を受診しましょう。

銀座の精神科である梅本ホームクリニックでは、統合失調症の患者様に対する在宅医療を提供しております。症状が重く外出が難しい場合も、安心してご相談ください。

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