統合失調症の患者に見られる妄想の内容は?ご家族の適切な対処法も解説
統合失調症とは、脳の神経のネットワークにトラブルが生じることで、こころや考えがまとまりづらくなってしまう精神疾患のことです。
感情や思考のコントロールが難しくなる上に、幻覚や幻聴、妄想などの症状が引き起こされることから、暴力的な行動をとってしまうこともあります。
症状の回復を目指すには、ご家族など周囲の人の協力が大切であるものの、どのように本人に接すればいいのか分からず、対応に苦労している方も多いのではないでしょうか。
本記事では、統合失調症の患者様をサポートされる方に向けて、統合失調症の症状や妄想の具体例、妄想への適切な対応方法について解説します。
想定される症状と向き合い方を知って、患者様とともに回復を目指していきましょう。
お問い合わせやご相談は無料で承っております。下記からお気軽にお電話ください。
統合失調症における症状の種類
統合失調症における症状は、主に下記の3つが挙げられます。
- 陽性症状
- 陰性症状
- 認知機能の低下
それぞれ順番に解説します。
陽性症状
陽性症状とは、健康なときにはなかった状態が表れる症状のことです。幻覚や妄想、支離滅裂な話し方、興奮状態などが現れます。
幻覚や妄想では、多くの場合「誰かに監視されている」というものや、「誰かが自分の悪口を言っている」といった被害的なものが多く見られるため、自身を守るために周りに攻撃的な言動をしてしまうケースも珍しくありません。
攻撃的な言動だけではなく、激しい独り言や何もないのに逃避行動を取るといった、不自然な行動を引き起こすことも多いです。
さらに、患者様は幻覚や妄想を事実と認識しているため、自分が病気だと自覚できないことが多く、コミュニケーションが難しいケースが多く見られます。
そのため、家族は本人が病気を自覚していないことを前提としたコミュニケーションを取る必要があります。
なお、患者様に自身が病気であることを自覚させる方法や、病識の無い患者様に対する適切な接し方は下記の記事で解説しているため、併せて参考にしてください。
統合失調症を自覚させる方法はある?接し方の注意点も解説します
陰性症状
陰性症状とは、健康なときにあったものが失われる症状のことです。
陰性症状の代表的な症状は、下記の通りです。
- 感情表現が乏しくなる
- 仕事や家事への意欲が低下する
- 会話の量や内容が乏しくなる
陰性症状は、一見無気力や抑うつ状態と同じように見えるため、別の精神疾患として捉えられがちです。精神疾患として認識せず、「ただ疲れているだけ」と軽視してしまうケースもあることでしょう。
しかし、統合失調症の陰性症状が発現している場合、患者様は活動的になりたくてもなれず、精神的なダメージを負っているケースがほとんどです。
上記のような症状が極端に見られる場合は、統合失調症やその他精神疾患を疑うようにしましょう。
認知機能の低下
統合失調症を発症することによって認知機能が低下し、下記のような症状が見られます。
- 会話に集中できなくなり、会話を成立させられない
- 優先順位をつけて作業を進められない
- 料理などの家事を円滑にできない
統合失調症における妄想の種類
続いては、代表的な症状である妄想について、具体例とともに解説します。
被害妄想
被害妄想とは、自分が何かしらの被害を受けていると感じてしまう妄想のことです。
統合失調症の妄想で最もよく見られる妄想であり、重症化すると周囲への攻撃行動に繋がる可能性もあるため注意が必要です。
被害妄想の具体例として、下記のような妄想が挙げられます。
- ストーカーされている
- 常に狙われている
- まわりから悪口を言われている
- 自宅に盗聴器がしかけられている
被害妄想の症状が重いと、実際に危害を加えられると思い込んで、恐怖心から外出ができなくなるケースもあります。
何かに怯えている様子などが見られる場合は、激しい被害妄想が起きているケースがあるので、注意しつつ歩み寄ってあげることが大切です。
誇大妄想
誇大妄想とは、自分の能力や資質が優れていると課題に評価したり、大げさに空想したりする妄想のことです。
誇大妄想の例として、下記のようなものが挙げられます。
- 自分は血統や遺伝的に非常に優れている
- 芸能人と付き合っている
- 世の中に自分の考えが広まっている
- 自分は神と同様の能力を持っている
多くの場合、周りの人に直接的な危害を与える要因となる妄想ではないものの、会話が成立しなくなったり、周りから怪訝な目で見られたりと、社会行動を行う上で大きな損失をもたらす可能性があります。
関係妄想
関係妄想とは、出来事や他人の行動が自分に関係があると思い込む妄想のことです。
赤の他人や、テレビ画面の向こう側にいる芸能人などと関係があると思い込み、誇大妄想などのほかの妄想と併発することも珍しくありません。
関係妄想では、下記のような妄想が起こる傾向にあります。
- 会社の人たちは自分の噂話ばかりしている
- テレビに出ている芸人が自分をバカにしている
- 政治家の発言は自分を警戒してのものだ
- 有名セレブの行動は自分への当てつけだ
上記にあるように、関係妄想は被害妄想と繋がっている可能性が非常に高く、関係がないはずの人から攻撃を受けているように思い込む傾向があります。
微小妄想
微小妄想とは、誇大妄想とは逆に自分が矮小だと感じたり、または価値がないと思い込んだりする妄想です。
微小妄想の例として、下記のようなものが挙げられます。
- 自分は世界一の貧乏だ
- 自分はゴミのような存在だ
- 重い病気にかかっていて治らない
- 過去に許してもらえない大きな罪を犯している
微小妄想も誇大妄想と同様に、周りの人に直接危害を与える要因になることは少ないものの、通常の会話が困難になるケースが多いです。
また、過度な抑うつに発展することもあるため、このような妄想が見られた場合も軽視することなく、医師に相談しましょう。
統合失調症の妄想に対する適切な対処法
統合失調症の方が激しい妄想をしているのを見ると、周りの方は関わりを避けたくなったり、否定したくなったりすることでしょう。
しかし、統合失調症の妄想に対して適切に対処するためには、下記の2つのポイントを押さえておく必要があります。
- 妄想を頭ごなしに否定しない
- 患者様が感じている辛い思いに寄り添ってあげる
それぞれ順番に解説します。
妄想を頭ごなしに否定しない
妄想は当然ながら事実ではないため、周囲の人からすると否定したくなることでしょう。
しかし、妄想を頭ごなしに否定せず、患者様の状態に対して理解を示してあげることが大切です。
妄想を否定すると、さらなる被害妄想に発展したり、混乱してしまうことによって過度なストレスがかかったりしてしまいます。
妄想に苦しんでいると思われる場合は、どのような妄想に苦しんでいるのかを、できる限り優しく聞いてあげましょう。
妄想の内容については否定も肯定もせず、優しく対話を行うことが大切です。
また患者様によっては、同じ話を繰り返すこともあります。
その場合にも根気強く話を聞いてあげるとともに、共感したり理解を示したりしながら聞くようにしましょう。
患者様が感じている辛い思いに寄り添ってあげる
妄想が出現しているとき、患者様はその状態に苦しみ悩まされています。
先述している通り、患者様本人は、どれほど現実と乖離したものであったとしても、妄想を「事実」だと思い込んでいます。
そのため、周りの方には理解し難い苦しみを抱えている可能性が高く、さらにその苦しみを誰にも共感できないという悩みを抱えているのです。
そのため、まずは妄想に苦しんでいることに共感しつつ、一緒に乗り越えていこうとする姿勢を見せてあげることが大切です。
統合失調症の妄想でお悩みの場合は精神科を受診しましょう
本記事では、統合失調症の症状や妄想の種類について解説するとともに、妄想が発現している患者様に対する適切な接し方についても解説しました。
統合失調症の治療には、周りの方のサポートが必要不可欠であり、妄想に苦しんでいる患者様に対して、適切にアプローチすることが鍵となります。
また、適切にアプローチするためには、できる限り患者様が抱えている苦しみや悩みの中身を知ることが大切です。ぜひ本記事をもとに、妄想に悩んでいる患者様の苦しみに寄り添ってあげてください。
なお、銀座の心療内科梅本ホームクリニックでは、統合失調症の様々な症状に合わせた治療を行っています。
訪問診療、医療費負担を軽減する自立支援医療制度にも対応しており、患者様やその周囲の状況に考慮した最適な治療を行いますので、まずは無料でお電話にてご相談ください。