認知症

ストレスは認知症の原因になるのか|なりやすい人の特徴と効果的な対策を解説

ストレスは認知症の原因になるのか|なりやすい人の特徴と効果的な対策を解説

高齢化の加速とともに、認知症患者数も年々増加しています。統計によると、2025年には日本人の65歳以上の約5人に1人が認知症になると予測されています。認知症の一番の原因は加齢による脳機能の低下ですが、その他にも脳血管疾患、生活習慣病などの疾患も原因のひとつです。

最近の研究では、ストレスと認知症のリスクは相関性があることがわかっています。本記事では、ストレスと認知症の関連性について、詳しく解説します。

出典:認知症|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省

ストレスと認知症の関連性について

原始時代の人間は狩猟生活の中で、大型動物に襲われるなど危険な場面が多々ありました。このためストレスを感じると、体内でコルチゾールやアドレナリンといったストレスホルモンが分泌され、血圧と心拍数が上昇し、危険な状況に対処できるよう進化したのです。

近代化した社会では、仕事・人間関係・金銭問題など様々なストレスがあります。これらのストレス要因はすぐに解決せず、長期化することも多く見られます。長期的な精神的なストレスによる血管の収縮は、脳への血流減少の原因です。その結果、脳神経の働きが鈍くなり、記憶力をつかさどる海馬が萎縮し認知症に繋がります。

実際にアメリカで行われた調査では、「ストレスホルモンであるコルチゾールの値が高い人の脳は、思考や感情、言語能力、筋肉の運動を司る大脳(海馬を含む)が小さい」という結果が出ています。

加えて、ストレスはうつ病や生活習慣病の重大な原因のひとつです。うつ病患者は認知症発症リスクが高いことが分かっています。また生活習慣病である、高血圧・脂質異常症・肥満は、脳血管障害を引き起こす大きな原因です。脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が起こることで、合併症として脳血管性認知症となります。

ストレスが原因で認知症になりやすい人の特徴

前章でストレスと認知症の間に関連性があることを解説しました。ストレスによって認知症が発症しやすい人とそうでない人がいます。

では、ストレスが原因で認知症になりやすい人にはどのような特徴があるのでしょうか。

短期な人

短気な人はそうでない人と比較し、認知症になりやすいと言われています。短気な人は気にくわないことがあると、大きな声を出したり、怒ったりすることで、周囲との関係性を保ちにくくなります。その結果、人とのコミュニケーションが減少し、家に引きこもりがちになるなど、一人で過ごす事が多くなります。コミュニケーションの減少によって脳への刺激が少なくなり、認知症になりやすくなります。

またもう一つの要因として、感情の起伏によって高血圧が起こりやすい事があります。認知症には発症原因による分類があり、アルツハイマー型認知症に次いで患者数が多いのが、脳血管障害による認知症です。これは高血圧や動脈硬化などが起因し、脳内の血管が詰まったり出血したりすることで発症します。このため短気な人は、ちょっとした事で血圧が急上昇しやすく、脳血管障害を引き起しやすいと言えます。

小さいことを気にする人

小さなことを気にしてしまう人は、他人からの何気ない一言や、深い意味のない出来事をネガティブに捉えてしまい、ストレスが蓄積されます。このストレスの蓄積が、脳への悪影響となります。また、繊細で傷つきやすい性格の人は、人と接するのを避けて、引きこもりがちになりがちです。家に閉じこもっていると、脳への刺激が減って、認知症になりやすくなります。

加えて、小さなことを気にしてしまう性格は、うつ病のリスクも高まります。最近の研究では、うつ病と認知症の相関性が注目されており、うつ病患者はそうでない人と比較して、認知症に罹患する確率が高いとされています。

協調性の無い人

協調性のない人は、短気の人と同じく他の人と一緒に行動したりグループに所属することが苦手です。このため他の人とのコミュニケーションの機会が減り、一人で過ごすことが増えます。他人との関わりや外部からの刺激が少なくなることで、認知症になるリスクを高めます。

認知症を悪化させるストレス要因

ここまで、これから認知症になるリスクとストレスの関連性について解説しました。実際に認知症の方がストレスを感じ、認知症を悪化しないためにはどうすればよいのでしょうか。周りの人の気遣いによって、認知症の方のストレスは軽減させることができます。

ここからは、認知症の方にとってのストレス要因をご紹介します。

気持ちを理解しようとしない

認知症の症状でもっとも多いのが記憶障害です。人の名前が思い出せない、日付が分からないといった軽度のものから、自分の子供と孫を間違える、一緒に暮らす家族が誰だかわからない、身の回りのことが出来なくなるなどの重度の記憶障害にまで進展します。認知症の方にとっても、今まで出来ていたことが出来なくなったり、思い出せなくなったりすることは非常にショックなことです。また自分の置かれている状況を理解する能力も低下するため、常に不安を感じています。このため、介護者から怒られたりすると、ますます困惑し、疎外感や不信感からストレスを感じてしまいます。

行動を制限する

誰でも自分の行動を他人に制限させるのは苦痛なものです。認知症の方も全く同じで、行動を制限されると強いストレスを感じます。たとえ行動を制限する理由を説明しても、認知症の方には理解が難しいため、「意地悪されている」「恐い、嫌い」といった介護者に対する負の感情を生み出してしまいます。これは介護拒否や精神的な不穏状態へとつながるので、認知症を悪化させかねません。

たとえば、徘徊する認知症の方を部屋に閉じ込めて、出られないようにしたとします。、ご本人には外出する理由があるため、強いストレスを感じ、より徘徊を促す要因となります。なぜ外出する必要があるのか傾聴したり、気持ちを紛らわせたり、一緒に外出するなどの対応することが重要です。

ひそひそ話や表情

認知症の方は、自分の記憶や能力が落ちていることを自分でも理解していて、ご本人が一番傷ついています。自己効力感が下がっており、周りからの言葉に敏感です。介護者がひそひそ話をしていたり、冷たい表情をしていると、「自分のことを言われているんじゃないか」「大切にされていない」「自分の居場所がない」などと解釈してしまいます。ひそひそと話すことは、認知症の方のストレスの原因になるので避けましょう。

認知症になると、話を聞いてからそれを理解するまで時間がかかります。会話をするときは大きな声ではっきりと、姿勢を低くして耳元で話しましょう。そして表情も重要です。笑顔を向けることで、精神的な安心感を与えることが出来ます。

効果的なストレス解消法について

運動

運動にはネガティブな気分を吹き飛ばし、心身ともにリラックスさせ、睡眠リズムを整える作用があります。このためストレス解消や生活習慣病の予防に非常に効果的です。ウォーキングや軽いランニング、サイクリングやダンスなど有酸素運動が適しています。自然の緑のある屋外での運動は、抑うつ気分を解消し、樹木から発せられる芳香物質により、リラックス効果があります。運動が苦手な方は、近所を散歩するだけでも効果的です。運動は軽く汗ばみ体が温まる程度で、1日20分ほど行うのが良いでしょう。一度にたくさん行うよりも、毎日継続する方がストレス対策に有効です。

またヨガやストレッチなど体の柔軟性を上げる運動も良いでしょう。この時に意識したいのが腹式呼吸です。腹式呼吸には自律神経を整え、リラックスする効果があります。

腹式呼吸の大切なポイントは、「しっかり息を吐き切る」ことです。まずは頭の中でゆっくりと3秒数えながら、口から息を吐きます。息を吐き切ったら、同じようにゆっくり鼻から3秒間息を吸いましょう。お腹に手を当てて、呼吸に合わせて凹んだり膨らんだりするのを感じながら、5〜10分繰り返します。

腹式呼吸をしていると、様々な考えが頭に浮かんでくるかもしれません。そのような時は、一旦頭を空っぽにして、呼吸だけに集中しましょう。腹式呼吸は集中力を高め、ストレスに強い心を作る訓練にもなります。

認知症のある方は、見守りの下で一緒に散歩に行ったり、軽い運動を行うと良いでしょう。一緒に数えながら腹式呼吸をするのも、リラックス効果が期待できます。適度な活動とストレス解消は認知症の進行を遅らせる助けにもなります。

人と交流する・会話する

ストレスや悩み事を誰かに話した後、すっきりした経験はありませんか?ストレスをアウトプットすることで、他人からの共感を得て心理的に癒されたり、アドバイスをもらって悩みが解決することもあります。また自分の悩みを話すことで、頭の中を整理することが出来ます。身近な人に悩みを相談するのが難しい場合は、カウンセリングなどを活用してみましょう。

人とのコミュニケーションは、脳への良い刺激となります。ストレス解消だけではなく、認知症予防としても効果的です。一人で部屋にこもりがちな方は、外部刺激の少なさから、認知症になりやすいと言われています。

適度にストレスを解消して認知症のリスクを減らしましょう

現代社会はストレスとの闘いです。いかにストレスを溜め込まずに上手に発散するかが、心身の健康を保ち、健やかな生活を送ることに関わります。若いうちからストレスを解消して、認知症予防をすることで、老後の人生を楽しむことができます。

本記事でも触れた、食生活の見直しや十分な睡眠の確保、適度な運動はストレス対策だけでなく、生活習慣病の予防にも効果的です。

本記事を参考に、長きにわたって健康でいられるように生活を見直してはいかがでしょうか。

また、梅本ホームクリニックでは、電話による無料相談を受け付けています。「認知症かもしれない」「認知症の進行を防ぎたい」という方は、お気軽に専門家に相談できる梅本ホームクリニックにご相談ください。

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