認知症

認知症を悪化させない方法とは【それぞれの認知症の進行の仕方も解説】

認知症を悪化させない方法とは【それぞれの認知症の進行の仕方も解説】

家族や自分自身が認知症と診断された際、誰もが考えるのが「これ以上悪化しないでほしい…」ことかと思います。認知症はどのように進行していくのでしょうか。また、進行を遅らせる方法はあるのでしょうか。

本記事では、認知症の症状や代表的な3種類の認知症について、病態や進行の仕方を解説するとともに、認知症の悪化を遅らせる方法についてもご紹介します。

認知症の症状

認知症の症状は、大きく分けて中核症状と周辺症状があります。

中核症状は、脳の神経細胞の障害によって起こる認知機能障害で、具体的な症状は下記の通りです。

  • 新しいことが覚えられない(記憶障害)
  • 日付や場所がわからない(見当識障害)
  • 道具を適切に使えない、物事の段取りがわからない(遂行機能障害)
  • 物の名前や人の名前が思い出せない(失語・語想起障害)

これは、ほぼ全ての認知症で見られる症状です。

一方で、この中核症状に環境要因・身体要因・心理要因などが重なった結果現れるさまざまな症状を周辺症状といいます。本人を取り巻く環境や人(環境要因)、本人の体調や飲んでいるお薬(身体要因)、日々の気分やストレス(心理要因)などに影響を受けます。

周辺症状は非常にさまざまな種類がありますが、よく見られるものは下記の通りです。

  • 無関心
  • イライラ
  • 攻撃性
  • 徘徊
  • 暴言
  • 過食や拒食

認知症の進行についても、この中核症状と周辺症状は分けて考えます。

認知症の進行は人それぞれです

認知症は現在のところ、徐々に進行していく疾患とされています。改善を図るのは難しいため、進行を遅らせることが治療目標となります。しかし、これは認知症の中核症状についての見解です。周辺症状については環境要因や身体要因、心理要因などをできるだけ取り除くことで、症状の出現を抑えたり、一度現れた症状を軽減したりすることができます。ただし、関わり方によっては症状を助長してしまうこともあるため注意が必要です。

代表的な認知症の進行

認知症にはさまざまな種類がありますが、代表的なものとしては下記の3つが挙げられます。

  • アルツハイマー型認知症
  • 脳血管性認知症
  • レビー小体型認知症

この3つは「三大認知症」と言われています。

アルツハイマー型認知症

脳に異常なたんぱく質がたまって神経細胞が死んでしまい、脳が萎縮することによって発症する認知症です。もの忘れから気付くことが多く、今まで日常生活でできたことが少しずつできなくなっていきます。言葉も出にくくなり「それ、アレして」や「これは、うーんと、その…」のように、指示語が多く出てくるようになります。もの忘れ・単語忘れが最初に出てくるのは、記憶を担っている海馬という部分から萎縮が始まるからです。萎縮がだんだんと脳全体に広がるにつれて、徐々にさまざまな症状が出てきます。

脳の萎縮の進行は年単位で緩やかに進みますので、症状の進行も緩やかです。

脳血管性認知症

脳の血管が詰まる「脳梗塞」や、血管が破れる「脳出血」などが原因で起こる認知症です。損傷を受けた脳は正常に機能できなくなるので、その部位が担っていた仕事はできなくなります。原因となる脳梗塞や脳出血の部位によってさまざまな症状が現れますが、損傷を受けていない部位の脳機能については比較的保たれている場合が多いのが特徴です(まだら認知症)。

ほとんどの脳梗塞や脳出血が急激に発症するので、脳血管性認知症も急激に発症・急激に悪化すると言えます。発症初期は、脳血管の状態によって症状が急に出現したり、突然ひどくなったりすることもあります。一方で脳血管症状が安定し、再発などの新たなイベントを防げていれば、急激な悪化をある程度防げるというのが大きな特徴です。

レビー小体型認知症

脳の神経細胞の中に「レビー小体」と呼ばれる、異常なたんぱく質の塊が現れるのが原因で起こる認知症です。このレビー小体が大脳の広範囲に現れるにつれて、さまざまな症状が出ます。実際にはいない人(虫などのこともあります)が見える「幻視」、眠っている間に怒鳴ったり、奇声をあげたりする異常言動などの症状が特徴的です。また、手足が震える、すり足で小刻みに歩くなどのパーキンソン症状が見られることもあります。スッキリしている時とぼーっとしている時が日によって変動したり、急にスイッチが入ったように症状が出たりするのも特徴的です。アルツハイマー型認知症と異なり、脳の萎縮は見られません。

レビー小体型認知症は、症状が軽い時と顕著な時を繰り返しながら、徐々に進行していきます。

この他にも認知症の種類はいくつかあり、複数の認知症が組み合わさっている方もいらっしゃいます。

認知症を悪化させないために

認知症をできるだけ進行・悪化させないために気をつけることがいくつも研究されています。そのうちの3つをご紹介します。

  • 食生活の改善
  • 睡眠時間の確保
  • 有酸素運動

食生活の改善

身体が「おいしい」と思うものをよく噛んで、バランスよく食べるのが一番です。特に意識して摂ると良いとされているのが、青魚と旬の野菜・果物です。

青魚には、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といった、不飽和脂肪酸が豊富に含まれており、これらには悪玉コレステロールを減らし、血液をサラサラにする効果があるといわれています。脳の血流が良くなると脳の機能が活性化されるため、認知機能の維持・悪化防止に有効です。

野菜や果物にはビタミンCやビタミンE、ポリフェノール、ベータカロテン、リコピンなどが多く含まれており、これらには抗酸化作用があります。特にアルツハイマー型認知症・レビー小体型認知症には、これらの抗酸化物質がとても大切なのです。

他にも、塩分や脂肪分、アルコールの摂り過ぎは脳出血や脳梗塞のリスクを上げるので、脳血管性認知症の再発予防のためにはできるだけ控えましょう。

睡眠時間の確保

睡眠不足は脳梗塞・脳出血や高血圧・糖尿病などの生活習慣病と関係が深いとされていますので、良質な睡眠は脳血管性認知症の発症を抑えることにも繋がります。他にも、アルツハイマー型認知症の方の脳に蓄積していると言われている「アミロイドβ」というタンパク質は、起きている時に脳内に蓄積し、眠っている時(ノンレム睡眠時)に脳から排出されることが研究でわかってきています。「アミロイドβ」の蓄積を防ぐためにも、睡眠はしっかりとりましょう。

有酸素運動

有酸素運動とは、ある程度の時間、無理なく続けられるような軽い運動のことです。脂肪を燃やす際に酸素が必要となるため、有酸素運動と呼ばれています。有酸素運動をすることで全身の血行状態が良くなるので、脳の血流も良くなります。また、脳細胞が活性化したり、大脳にある前頭葉という部分の働きが良くなるとも言われています。

有酸素運動も食生活や睡眠と同様に、脳梗塞や脳出血のリスクを抑えます。そういった意味でも軽い運動を生活に取り入れていきましょう。具体的には週に2〜3回、1日20〜30分程度のウォーキングやサイクリングなどがおすすめです。それも難しいという方は、自宅で座ったまま足踏みなどでも効果があると言われています。

認知症の進行を抑える環境を作りましょう

認知症を悪化させない方法について、それぞれの認知症の特徴も踏まえて解説しました。「食事・睡眠・運動」の質をあげることで、認知症だけでなくさまざまな生活習慣病も防げます。それぞれの認知症を知り、生活のちょっとした工夫で進行をおさえ、認知症の方本人も、一緒に生活する家族もお互いが気持ちよく過ごしていきましょう。

また、梅本ホームクリニックでは、電話による無料相談を受け付けています。「認知症かもしれない」「認知症の進行を防ぎたい」という方は、お気軽に専門家に相談できる梅本ホームクリニックにご相談ください。

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