膝関節

膝関節における再生医療の効果について解説します

膝関節における再生医療の効果について解説します

膝の痛みは日常生活の活動に大きな影響を及ぼします。その膝の痛みを引き起こす代表的な疾患が、変形性膝関節症です。膝の関節がすり減ることで痛みを引き起こし、膝を曲げられなくなったり、最終的には歩けなくなったりと日常生活に大きな支障をきたします。

膝の治療と言えば、膝にヒアルロン酸を注射したり、手術をしたりといったイメージを持ちがちです。しかし、手術を受ける事に恐怖心を抱き、なかなか決断できない方も多いかと思います。

近年注目されている膝の再生医療は、このような膝のお悩みを改善できる可能性を持っている治療法です。この記事を読めば、膝の再生医療とはどのような治療なのか?といった疑問を解決できます。ぜひ最後まで読んで見てください。

再生医療とは

再生医療とは、事故や病気によって失われた身体の組織を再生することで症状の改善を図る、新しい医療技術を言います。再生医療は、失われた組織や臓器を元通りにすることを目指しています。私たちの体は、約60兆個の細胞の集まりでできており、日々細胞は生まれ変わりを繰り返して私たちの身体を維持しています。この”細胞の生まれ変わり”に着目したのが、再生医療です。

従来の膝関節の治療法との違い

これまでの治療では、痛み止めの内服や、湿布など外用薬を使用、ヒアルロン酸注射による一時的な傷みの緩和などで対処されてきました。しかし、大きな改善が見られることはほとんどありません。ヒアルロン酸注射による痛みの緩和も一時的なもので継続して注射を行う必要があります。

そして、これらの治療を続けていても、膝の痛みや膝関節の変形が悪化することはしばしばあります。改善が見られない場合は、人工関節置換術といった外科的手術の適応となってしまいます。

再生医療は前者と後者の中間に位置する治療です。服薬やヒアルロン酸注射をしても改善が見られないが、手術はしたくない方への選択肢になります。

膝関節の再生医療のメリット

では、膝関節の再生医療にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

ここでは、大きな2つのメリットについてご紹介します。

手術・入院の必要が無い

膝の再生医療では、皮膚を切ることはありません。「採血もしくは注射器で脂肪を吸引し、膝に注射する」というシンプルな手順で行います。採血は通常の採血よりも少し多い量を採取するだけですし、脂肪の吸引も局所麻酔をして実施するため、痛みを心配する必要がありません。もちろん、入院する必要はなく、日帰りでの処置になります。治療後は入浴・飲酒は控える必要があるものの、日常生活上での動きの制限は特にないため、すぐに日常生活に戻れます。エクササイズやランニングなどの激しい運動に関しては、1週間ほど控えていただく必要があるものの、日常生活への影響が非常に少ない治療法です。

合併症のリスクが少ない

ご自身の血液や脂肪組織を使うので、薬剤などと違ってアレルギー反応や副作用が起きにくいことが特徴です。治療後、注射部位が2〜3日腫れたり痛みが出ることがありますが、数日経てばこの症状は収まります。

膝関節の再生医療のデメリット

膝関節の再生医療には、入院が必要なく日帰りで治療できる、合併症が起こりにくいといったメリットがあることがわかりました。では、デメリットはいったいどのようなものがあるのでしょうか。ここでは再生医療のデメリットについて解説します。

治療効果に個人差がある

膝関節の再生医療は、すべての人に効果が現れるわけではありません。これには、血液の状態や身体の反応などが関係していると言われていますが、はっきりとした原因は不明です。また、肥満がある人は、治療の効果が得られにくいと言われているほか、治療効果に個人差が大きいこともわかっています。効果がすぐに現れる方もいれば、効果が得られるまでに1ヶ月ほどかかる場合もあります。治療効果を実感できる期間も、人によってそれぞれです。

 

合併症などがある場合、受けられない

変形性膝関節病では、病気の進行によって膝の軟骨がすり減り、足がだんだんO脚に曲がっていきます。膝関節の軟骨が完全になくなってしまった状態では、PRP療法は受けられません。なぜならPRP療法は、血小板は炎症を抑え、組織の回復を促すものであって、なくなった軟骨を作れないからです。この状態になると、外科的手術が適応となります。

 

また、悪性疾患がある場合や、抗がん剤・免疫抑制剤を内服している方も、適応外となります。合併症について気になる方は、実際に受診のうえ確認すると良いでしょう。

保険適用外である

再生医療は最新の治療法であり、安全性は確立されています。しかし、現在の時点では保険適応されておらず、自由診療のため費用は全額自己負担です。膝の再生医療を受けるための診察、検査、採血、処置、治療、痛み止めの処方など、再生医療に関わるすべての過程の費用が、基本的に自己負担となります。このため、従来の治療と比べて、費用負担が大きいのがデメリットと言えます。また、病院によって費用が異なるので、評判や口コミを集めて、よく比較してみるのが良いでしょう。

 

膝関節の再生医療の種類

では、膝関節の再生医療にはどのような種類があるのでしょうか。

ここでは、代表的な2つの再生医療についてご紹介します。

幹細胞治療

私たちの体は細胞の集まりです。細胞は毎日死んでは新しく生まれ変わることを繰り返して、私たちの生命を維持しています。私たちの体の細胞には体細胞と幹細胞があります。体細胞はその器官・部位の細胞にしか分裂できません。一方で幹細胞は、同じ幹細胞にもなれれば、その他の器官・部位の細胞にも変われる万能細胞であり、もちろん膝関節の細胞にもなり得ます。通常、身体の損傷は細胞の分裂によって修復されますが、老化や一度大きな損傷が与えられた部位は、完全に元通りにはなりません。そこで、この幹細胞を使って、老化や大きく損傷した部位を、幹細胞が替わって修復します。幹細胞を損傷した膝に注入することによって、組織の修復を図ります。

 

幹細胞治療の具体的な治療の流れは下記の通りです。

 

  1. 幹細胞治療が受けられるのか、医師の診察があります。
  2. 脂肪の多い太ももやお腹から注射器で20mLほどの脂肪を吸引します。局所麻酔をするので痛みの心配はありません。
  3. 専門機関で、脂肪から幹細胞を抽出します。約6週間ほどかかります。
  4. 膝関節に幹細胞を注入します。日帰りの治療になります。

PRP治療

PRPとは、多血小板血漿(Platelet Rich Plasma)の略です。血小板は血液に含まれており、血が出たときに血を止めるたり、傷を治したりする働きをしています。この血小板の自己治癒力を利用し、傷ついた膝関節の組織を修復するのがPRP治療です。PRP両方は、ヨーロッパやアメリカで盛んに行われている治療法で、自分の血液を使うため、副作用が起こることも滅多にありません。

たとえば、膝の変形(変形性膝関節症)で悩んでいる人は、PRP療法の対象になります。変形性膝関節症は病状の進行に伴って、軟骨がすり減る、半月板が削れる、炎症が起きることで膝に水が溜まる、といった症状がでます。これらの症状によって膝の痛み、膝の変形を引き起こされるのです。PRP療法は、こうした膝の炎症を抑えたり、組織の回復を促す効果が期待できます。ヒアルロン酸注射をしても、痛みが改善されない方、手術をできれば受けたくない方も、PRP治療を検討してみても良いでしょう。

 

PRP治療の具体的な治療の流れは下記の通りです。

 

PRP治療の方法

  1. PRP治療が適しているのか、医師の診察を受けます。
  2. 血液を20mLほど採取します。
  3. 遠心分離機にかけ、血小板だけを抽出します。
  4. 膝に血小板を注入します。日帰り治療です。

再生医療におけるよくある質問

 

それでは、膝関節の再生医療でよくある質問に対して、詳しく解説していきます。

ここでは、よくある質問として代表的な2つの質問にお答えします。

治療効果が出るまでどれくらいの期間がかかる?

 

膝関節の再生医療の効果は、早い方で3日ほど、遅い方でも1〜2ヶ月ほどで現れ、60%〜80%の方に痛みの軽減が感じられます。効果の持続期間は1ヶ月から最長2年ほどです。靭帯組織に関しては、完全に治癒する例もあります。

 

ただし、前述の通り効果の発現には個人差が見られるので注意が必要です。

再生医療の効果が得られる体質か調べたいです

 

膝の再生医療を行った患者さんのすべてに効果が感じられるわけではありません。PRP治療でいうと、治療件数600件あたり、およそ60%の人に効果が現れたとのデータがあります。治療効果の有無には、ご自身の血液の状態、血小板の活性が高いのか低いかなど、要因があると考えられていますが、現時点では明らかになっていません。また肥満の方、膝の変形が重症な方は効果が出にくい傾向にあります。

 

また、下記のような方は膝の再生医療(PRP治療)が受けられない可能性が高くなっています。

 

  • 悪性疾患がある方
  • 抗がん剤や免疫抑制剤を使用している方
  • 明らかに感染症に感染している方
  • 38℃以上の発熱がある方
  • 薬物過敏反応がある方

再生医療の効果が得られる体質なのか、再生医療が受けられるのか知りたいという方には、ぜひ一度専門医師の診察を受けることをおすすめします。

まとめ

 

本記事では、膝関節における再生医療の効果について解説しました。

膝関節の再生医療は、自分の血液・脂肪を原料にして行うものであり、アレルギー反応や副作用が起こりにくいことがメリットです。また入院が必要なく、治療後の生活に影響を及ぼさないことも大きな特徴です。しかし、治療効果が人それぞれであることや、治療は保険適応外であることがデメリットと言えます。

この記事を読んで、膝の再生医療に関して興味を持った方は、一度専門医の話を聞いてみるとよいでしょう。

膝関節の再生医療|PRP-FD療法と効果【メリット・デメリット】

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