膝関節

膝関節におけるPRP-FD療法の効果や流れを分かりやすく解説します

膝関節におけるPRP-FD療法の効果や流れを分かりやすく解説します

近年、患者自身が持つ自然治癒力を利用して疾患の治癒や症状の改善を目指す「再生医療」が注目されています。再生医療はさまざまな分野での活用が期待されていますが、なかでも変形性膝関節症に有効な再生医療である「PRP-FD療法」は、患者への負担が少なく自然な形での治癒を目指せるメリットの多い治療法です。

 

この記事では、膝関節の治療に効果的なPRP-FD療法について紹介します。治療の効果や施術の流れを押さえて、ご自身にあった治療法選びの選択肢として検討してみてください。

再生医療とは

再生医療とは、私たち人間が本来持っている自然治癒力を利用して怪我や病気の治癒を目指す医療のことです。患者の体内から抽出した細胞を培養して移植することで、損傷した組織や臓器を再生し、怪我や失われた機能などを回復させることを目指します。

 

トカゲがしっぽを切り離されても細胞を再生し、元通りに復活する力を持っていることは有名でしょう。トカゲほどではありませんが、人間にも失ったり傷ついたりした細胞を修復し、再生する力があります。この自己再生能力を利用して疾患を治癒するのが、再生医療なのです。

 

私たちの体には血液や皮ふ、臓器となる「体細胞」と、これからいろいろな臓器や組織になれる未分化な細胞である「幹細胞」の2種類の細胞があります。再生医療は、体細胞が細胞分裂を繰り返して死滅した細胞を補充したり、幹細胞がさまざまな臓器や組織に分化したりする働きを活かし、傷んだ細胞や組織の修復や再生を目指すのです。

 

再生医療では自分の細胞を使って治療するため、薬物治療のような副作用や手術の合併症リスクなどが生じることはありません。体の負担や痛みを最小限に抑えて治療ができるので、今後さまざまな分野への応用が期待されています。

PRP-FD療法とは

PRP-FD療法とは、自然治癒作用を持つ血小板を濃縮した「PRP(多血小板血漿)」をさらに高濃度にした「PRP-FD(血小板由来因子濃縮物)」を用いた再生医療です。ひざの関節や靭帯に注入することで自己修復力を一時的に高めることができ、痛みを軽減したり機能を改善したりする効果が高い治療法です。

 

PRP-FDには、細胞分裂を活性化して傷んだ細胞の修復を促す血小板由来の「成長因子」が、活性化された状態で大量に含まれています。成長因子は組織や細胞の修復を促すだけではなく、コラーゲンや血管の形成、骨や傷ついた血管の再構築を促進する作用もあります。したがってPRP-FD療法を行うことで、ダメージを負った組織の早期回復が見込めるのです。

 

効果の感じ方や持続期間には個人差がありますが、一度PRP-FD療法を行えば、6か月から1年程度は効果が持続すると言われています。

PRP-FD療法とPRP療法の違い

PRP-FD療法とPRP療法は、どちらも患者から抽出した血小板を濃縮して濃度を高め、血小板に含まれる成長因子を注入することで傷んだ組織を治癒する治療法です。

 

それでは、それぞれの治療法にはどのような違いがあるのでしょうか。わかりやすいように、両者の特徴を以下の表にまとめました。

 PRP-FD療法PRP療法
成分血小板由来因子濃縮物多血小板血漿
成長因子の総量PRPの約2倍-
治療費用の目安
(片膝1回あたり)
10万円~3万円~
保存可能期間約6か月当日のみ
採血から投与までの期間約3週間後当日
術後の痛み発生するが弱い発生する

PRP-FD療法とPRP療法の最大の違いは、治療に用いる成分にあります。PRP-FD療法は、PRPをさらに活性化させて血小板に含まれる成長因子だけを抽出した成分を使用します。そのうえで抽出した成長因子を無細胞化して濃縮することで、成長因子の総量をPRP療法の約2倍まで高めることができるのです。

 

さらに、濃縮した「血小板由来因子濃縮物」はフリーズドライされるため、長期保存することも可能です。成長因子は無細胞化されるので、PRP療法よりも術後に痛みが生じにくいという特徴もあります。

 

なお、どちらも保険適用外となる治療であるため費用は高額になりますが、PRP-FD療法のほうがより治療費は高くなります。

膝関節のPRP-FD療法の効果

PRP-FD療法は、主に変形膝関節症の治療に用いられる再生医療です。膝関節の治療には薬物治療や手術、ヒアルロン酸注射などによる複数の治療法がありますが、PRP-FD療法を選ぶことでどのようなメリットが得られるのでしょうか。

 

ここからは、PRP-FD療法の効果について3つ紹介します。

手術・入院の必要が無い

PRP-FD療法は、患者から抽出したPRP-FDを培養して患部に注射するだけなので、手術や入院の必要がありません。治療は5分程度で終わり、施術内容は膝関節へのヒアルロン酸注射と同様です。

 

施術した当日に歩いて帰ることが可能なほど、体への影響が少ない点が大きなメリットです。体に優しい低侵襲治療なので、ブランクを避けたいプロのスポーツ選手にも選ばれています。

自然な形への修復が期待できる

PRP-FD療法は、患者自身が持つ自己修復力を利用した治療法であるため、より自然な形への修復が期待できます。

 

手術によって骨を金具で固定したり、人工関節を設置したりすれば膝関節の治療をすることは可能です。しかし、メスを入れて金具や関節を埋め込む必要があるため、日常生活に戻るまでに時間がかかったり激しい運動ができなくなったりするおそれがあります。

 

PRP-FD療法であれば、軟骨を削ったり器具を埋め込んだりすることはありません。自分の細胞によって治癒を目指せるので、より自然かつ安全に膝関節の治療を行えるのです。

慢性的な膝の痛みの改善が期待できる

PRP-FD療法は、自分が持つ血小板の成長因子を使って細胞自体の治癒を目指すため、膝の痛みを根本から治療できます。細胞や組織のレベルから症状の改善を促すので、これまでの治療では改善が見られなかった慢性的な痛みにも効果が期待できます。

 

また、PRP-FD療法によって関節や軟骨の再生を促すことで、軟骨の摩耗や症状の進行を抑えられる点も大きなメリットです。

PRP-FD療法の流れ

実際にPRP-FD療法を行う際は、どのような流れで治療を進めるのでしょうか。治療への不安を取り除くためにも、基本的な手順を見ていきましょう。

採血

PRP-FD療法を行うためには、事前に患者自身から採血しておく必要があります。

 

まずは医療機関を受診して疾患の状態や治療経過を確認し、PRP-FD療法が適応となるかどうかを確認する必要があります。治療が適応となり患者が処置に合意する場合は、採血の予約を入れましょう。

 

採血では、静脈から49mlの血液を採取します。採取する血液の量は少量なので、貧血の方でも心配する必要はありません。

作成

採取した血液は、厚生労働省から特定細胞加工物製造許可を取得している施設に搬送されます。そこで血液の検査と加工を行い、PRP-FDを生成します。

 

所要期間は3週間程度です。なお、検査の際に感染症に罹患していることがわかった場合は、PRP-FD療法を実施できません。

注射

PRP-FDが生成できたら再び来院し、エコー検査を用いながら慎重に患部へ注射します。治療時間は約5分程度で、ヒアルロン酸注射で行う膝関節治療と同様の施術だと考えておけば問題ありません。施術後は、そのまま徒歩でお帰りいただけます。

 

ただし、当日に入浴したり血行がよくなったりする行為をすると、痛みが強まるおそれがあるため注意しましょう。反対に安静にしすぎてしまうと、患部が固くなって痛みが長引くことがあります。

 

普段どおりの生活を送りつつ、軽いリハビリテーションをしながら経過観察することをおすすめします。

まとめ

PRP-FD療法は、自然治癒力を持つ血小板を高濃度に濃縮し、成長因子を活性化した「PRP-FD(血小板由来因子濃縮物)」を用いた治療法です。近年注目されている再生医療の一種で、自分の細胞を利用して治療するため、副作用や体への負担がなく安全に治療できるというメリットがあります。

 

PRP-FD療法では、患者自身から採取した血液で生成したPRP-FDを注入するだけなので、手術や入院が不要で自然な形での治癒が目指せます。PRP-FD療法が適応になるかどうかは医師の診断が必要になるので、ご希望の方はお気軽に治療を取り扱っている医療機関までご相談ください。

膝関節の再生医療|PRP-FD療法と効果【メリット・デメリット】

また、梅本ホームクリニックでは、電話による無料相談を受け付けています。「変形性膝関節症に悩まされている」「手術は難しいが、最先端医療で症状を緩和させたい」このような方は、お気軽にご相談ください。

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