認知症

睡眠薬を服用すべき認知症の周辺症状とは?発症リスクも併せて解説

睡眠薬を服用すべき認知症の周辺症状とは?発症リスクも併せて解説


睡眠障害に悩まされているものの、睡眠薬が認知症リスクを高めると聞いたことがあり、睡眠薬の利用を踏みとどまっている方は多いのではないでしょうか。

 

睡眠薬には副作用のリスクがあるものの、睡眠障害によって認知症の悪化や、認知症の発症リスクが高まるとされているため、適切に睡眠薬を活用し、睡眠障害の改善を図るべきです。

 

本記事では、認知症リスクと睡眠薬の関係性を解説するとともに、睡眠薬を使うべき認知症の睡眠障害や、具体的な薬を紹介します。

 

なお、睡眠薬を使用する際に注意するべきことについても解説するため、ぜひ参考にしてください。

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睡眠薬は認知症を悪化させる原因になる?

近年、睡眠薬が認知症を悪化させる原因になるということが書かれたメディア等が非常に増えています。

 

睡眠薬を適切に服用することで、生活のリズムを整え、健康を保てる可能性が高まります。

 

しかし、認知症リスクを高めることが心配で、利用を踏みとどまっている方が多いのではないでしょうか。結論から申し上げると、睡眠薬の利用によって認知症リスクが高まる確固たる証拠はありません。

 

そのため、睡眠薬が認知症を引き起こす原因になるとは言えないのです。むしろ、不眠症などの睡眠障害の影響によって、認知症が発症したり、悪化したりするリスクが高まることは判明しています。

 

そのため、睡眠薬の適切な利用で睡眠障害を改善することは、認知症リスクを軽減するとも考えられるでしょう。

さらに、認知症の周辺症状として睡眠障害が出ている場合は、睡眠薬を服用するべきであることもあります。

 

睡眠薬が認知症を悪化させる原因になるという声もあるものの、患者様と介護者の身体への負担を減らすためにも、睡眠薬を活用することを推奨します。

睡眠薬を使用するべき認知症の周辺症状

認知症の患者様に、下記のような周辺症状が見られた場合、睡眠薬を使用するべきかを検討すべきだとされています。

  • レム睡眠行動障害
  • 深夜徘徊
  • 不眠障害

それぞれ順番に解説します。

レム睡眠行動障害


レム睡眠行動障害とは、夢の中の行動が現実世界にも反映されてしまい、睡眠中に下記のような異常行動が起きてしまう障害のことです。

  • 突然大声で怒鳴ったり、叫んだりする
  • 手足をばたつかせ、暴れる
  • 隣で寝ている人などに暴力を奮う

レム睡眠行動障害は、レビー小体型認知症の患者様によく見られる睡眠障害です。

レム睡眠行動障害が起こると、介護者やご家族の睡眠が妨げられるため、同居人全員の生活の質が下がってしまいます。

 

当の本人は無自覚であるため、対処が難しいです。

そのため、疑わしい症状が見られた場合、速やかに担当医に相談することが大切です。

深夜徘徊


深夜徘徊は、アルツハイマー性認知症の患者様に起こりやすい、睡眠障害の一種のことです。

 

記憶障害や見当識障害によって引き起こされるものであり、自分の居場所が分からなくなってしまうことによって発生します。

上述した、レム睡眠行動障害とは異なり、一旦目覚めてトイレなどに行こうとした際などの覚醒時に、自分の居場所が分からずに発症してしまいます。

 

家族が寝てしまった深夜に外に出てしまい、患者様が非常に危険な状態になってしまうため、深夜徘徊の対策を行うことが大切です。

 

後述する睡眠薬の服用のほかにも、玄関にセンサーとブザーを設置するなどして、深夜徘徊を防ぐ十分な対策を行いましょう。

不眠障害


不眠障害は、認知症の患者の多くに見られる睡眠障害であり、主に昼夜逆転現象などが挙げられます。

 

「昼間に活動し、夜間は休む」という、体内時計の働きが低下してしまい、昼寝は行うにもかかわらず、夜は寝られないという障害が起きてしまうのです。

 

不眠障害を放置しておくと、日中の活動量が大きく低下してしまい、食欲低下や体調不良などの二次的な症状を引き起こしてしまいます。

 

また、先述した深夜徘徊の可能性を高める恐れもあるため、睡眠障害と見られる症状が確認された場合、医師に相談することが大切です。

 

なお、認知症の妄想に効く薬に関しては下記の記事で解説していますので、本記事と併せてご覧ください。

認知症の妄想に聞く薬とは?服用時の注意点も解説します

認知症による睡眠障害に効果的な睡眠薬

認知症による睡眠障害に効果的な睡眠薬は、下記の通りです。

  • ゾルピデム
  • ゾピクロン
  • ラメルテオン
  • エスゾピクロン
  • クエチアピン

それぞれ順番に解説します。

ゾルピデム


ゾルピデムは、脳の神経を沈静化することで、脳をリラックスした状態に持っていき、自然な眠りを誘発させる睡眠薬です。

ゾルビテムは、催眠作用に特化した非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の一種であり、転倒リスクや依存性の緩和にも効果があります。

 

また、即効性が高く、2〜4時間で睡眠薬の効果が失われる超短期型であるため、軽度の睡眠障害であり、午前中の活動量を維持したい場合におすすめです。

 

睡眠薬の中でも、比較的安全性が高いとされており、処方される機会が多い睡眠薬です。

ゾピクロン


ゾピクロンは、ゾルピデムと同様に、脳をリラックスした状態に持っていくことで、自然な眠りを誘発させる睡眠薬です。

ゾルピデムと同じく、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の一種であり、比較的安全性が高いことが大きな特徴です。

 

また、他の睡眠薬と比べて、筋肉を弛緩する作用が弱いため、翌朝の眠気や倦怠感などが起きにくいため、日中の活動量が低下するリスクが低いとされています。

 

ただし、高齢者の場合は、翌朝の眠気に繋がることも多くあり、ふらつきや転倒に注意しながら利用する必要があります。

ラメルテオン

ラメルテオンは、睡眠のリズムを作るために活用する睡眠薬です。

ラメルテオンは、睡眠薬の中でも、「メラトニン受容体作動薬」に分類され、睡眠に深く関わるメラトニンというホルモンの受容体に作用する薬です。

 

メラトニン受容体を活性化させるため、自然な入眠に誘導しつつ、寝付きの悪さや途中覚醒を改善する働きがあります。

 

即効性はないものの、安全性が高く、翌朝の眠気やふらつきのリスクなども非常に少ないことが特徴です。

 

不眠障害が見られるものの、睡眠のリズムを立て直すことで改善を図りたい場合に、広く使われています。

エスゾピクロン

エスゾピクロンは、ゾルピデムやゾピクロンと同様に、脳の神経の沈静化によって、自然な眠りに誘導する非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬です。

 

非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬の中でも、精神を安定させる作用のある、「神経性アミノ酸GABA」の働きを高めることで、脳のリラックスと眠りを促す薬です。

 

ゾルピデムやゾピクロンと同じく、安全性が比較的高い睡眠薬ではあるものの、翌朝のふらつきやめまいが起こることもあるため、注意しながら使用する必要があります。

クエチアピン

クエチアピンは、認知機能障害や気持ちの昂り、幻覚・幻聴などに効果がある非定型抗精神病薬の1つです。

 

気持ちの昂りを抑える効果があるため、心身を落ち着かせ、心身の活動の改善が期待できます。

沈静作用が高いものの、投与初期には立ちくらみなどの副作用が起きやすく、注意しながら服用を開始する必要があります。

 

また、肝機能が低下している場合や、糖尿病を発症している場合は、慎重に使用する必要があります。

 

高齢者の方の中には、このような疾患を持つ方は少なくないため、事前に確認した上で、医師に共有するようにしましょう。

睡眠薬を使用する際の注意点

睡眠薬を使用する際は、下記の3点について注意することが必要です。

  • 決められた用量を服用すること
  • 服薬を急に停止しない
  • 医師に途中経過を報告しながら服用する

それぞれ順番に解説します。

決められた用量を服用すること


睡眠薬を服用する際は、必ず決められた用量を守りましょう。

通常、睡眠薬を服用すると10〜30分ほどで効果が出てきます。しかし、薬の効き目には個人差があるため、遅れて効き始めることもあります。

 

睡眠薬を飲んだものの、効果が実感できないからと言って、追加で服用をしたり、勝手に服用する量を増やしたりしてはいけません。

 

決められた用量以上の睡眠薬を服用してしまうと、睡眠薬に体が慣れてしまい、より多くの睡眠薬が必要となります。

 

その結果、睡眠薬の副作用が発現しやすくなったり、睡眠薬依存の原因になったりする恐れがあるのです。

 

睡眠薬の効果が実感できない場合は、必ず担当医に相談した上で、適切な対応を行ってもらいましょう。

服薬を急に停止しない


睡眠薬を一定期間服用し続けた方は、服薬を急に停止しないように気をつけましょう。

なぜなら、服薬を急に停止することによって、不眠症状の再発をはじめとする、睡眠障害を引き起こす可能性が高まるからです。

 

特に、認知症の患者様は、不眠障害のほかにも深夜徘徊などが起きる可能性も考えられるため、非常に危険です。

 

睡眠薬の服用を停止したい場合は、医師に相談した上で、少しずつ量を減らすように心がけましょう。

医師に途中経過を報告しながら服用する


睡眠薬は、睡眠障害を改善するメリットがある一方で、副作用の可能性も高い薬です。

 

そのため、常に医師と連携をとりながら、適切な種類の睡眠薬を、適切な用量で服用することが大切です。

睡眠薬を服用する場合は、必ず服用してからの状態を担当医に共有し、担当医が患者様の状態を常に把握している状態にしましょう。

 

そうすることで、睡眠薬による副作用のリスクを低減できるほか、担当医は適切な処方や治療をしやすくなり、結果として認知症による睡眠障害の改善に繋がります。

認知症の方は、正しく睡眠薬を利用しましょう

本記事では、睡眠薬と認知症リスクについて解説するとともに、睡眠薬を使用するべき認知症の睡眠障害や活用される代表的な薬をご紹介しました。

 

また、睡眠薬を利用する場合は、先述した注意点を必ず守ることが大切です。

 

常に医師との連携を取りながら、医師・介護者が患者様の状況に対して共通認識を持つことが、適切な睡眠薬の処方や、認知症治療につながります。

そのためにも、医師と細やかに連絡を取りながら、信頼関係を構築するように、心がけましょう。

 

銀座の心療内科梅本ホームクリニックでは、認知症の診察を行っております。自宅で診察や治療を受けられる在宅医療にも対応しており、患者様の状況を細やかに把握することが可能です。

 

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