脳梗塞

脳梗塞後遺症は治るのか|種類や原因・最適なリハビリについて

脳梗塞後遺症は治るのか|種類や原因・最適なリハビリについて

日本の死亡原因4位にもランクインしている脳梗塞は、脳細胞へ血管を送る血管が詰まり、脳の細胞が壊死してしまう病気です。

治療しても運動障害や麻痺が残ってしまう恐れがあるため、発症してしまった際は適切な治療だけではなく、治療後のリハビリを行うことも大切だとされています。

この記事では脳梗塞の種類や原因、リハビリの方法や注意点について解説します。脳梗塞についての正しい知識を身につけ、正しく治療やリハビリをしていきましょう。

脳梗塞とはどんな病気?

脳梗塞とは、脳動脈が詰まったり閉塞したりすることによって、虚血状態となり脳が壊死してしまう疾患です。

日本人の死亡原因の第4位と非常に危険性が高い疾患ですが、脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の3つ疾患を総称した「脳卒中」が占める死因の割合は、50年で半減しています。そのため、罹患したからといって必ず死に至る病気だということではなく、治療やリハビリで状態が改善することもあります。

なお一口に脳梗塞と言っても、以下の3種類に分類が可能です。

  • アテローム血栓性
  • 心原性脳塞栓症
  • ラクナ梗塞

また脳梗塞が起きてしまっているときは、体のさまざまな部位に症状が現れます。

  • 急に出現する神経症状:顔面麻痺、片麻痺、片側の感覚障害、視野障害、構音障害、歩行障害、見当識障害等、高次脳機能障害(失語、注意障害、記憶障害、遂行機能障害、反側空間無視)、パーキンソンニズム、排尿障害、排便障害
  • 顔が歪んでしまう
  • 腕が動かしにくくなる
  • 言葉がうまく出てこない

上記の症状に1つでも心当たりがある場合は、脳梗塞の可能性があります。できるだけ早く病院で診察を受けるようにしましょう。

脳梗塞は治る?完治はするのか

脳梗塞に罹患してしまったときは、一刻も早く治療を始める必要があります。脳梗塞の状態が長くなれば脳の壊死が進み、より重篤な後遺症が残ってしまう可能性が高いためです。

適応があれば、はじめに血管の閉塞を引き起こしている血栓を薬で溶解させる「血栓溶解療法」、もしくはカテーテルを血管から挿入して血栓を取り除く「血管内治療」を行います。

血管内治療は、発症後4.5時間以内の患者に対して行われる治療です。発症時間が不明なときはMRIでDWIとFlair画像を確認し、ミスマッチがあれば適応となります。対して血管内治療は、発症後6時間以内の患者が対象の治療です。ステントリートリバーによる治療を行います。その後、急性期薬物療法を行い、検査としてホルター心電図や頸動脈超音波、心臓超音波を実施し、同時にリハビリテーションを行います。

急性期治療では、基本的にアスピリンを投与することが多いです。軽症脳卒中患者にはアスピリンとクロピトグレルを投与しますが、これらの抗血小板薬2剤併用することは出血のリスクを高める可能性が高いです。したがって、長期的にわたって投与することは避けるようにします。

なお、脳梗塞に罹患した場合、片麻痺などの運動障害が1か月以上生じる確率が50%、運動障害がないか急速に回復する確率が30%、死亡する確率が20%ほどの割合になります。

脳梗塞の原因

脳梗塞は、動脈硬化による血管の梗塞や心房細動によって血栓が脳の血管にとび、詰まることが原因で引き起こされる疾患です。ここからは、脳梗塞の原因について詳しく見ていきましょう。

脳血栓症

脳梗塞の1つ目の原因である脳血栓症は、動脈硬化によって血管が狭くなること(血管狭窄)で引き起こされます。血管狭窄が進行すると血栓が血管を塞ぐ「脳血栓」が起こりやすくなり、脳組織の壊死が起こってしまうのです。

「アテローム血栓性脳梗塞」が、脳血栓症で引き起こされる疾患に含まれます。

脳塞栓症

脳塞栓症は、心臓弁膜症や不整脈などで血栓が作られ、脳動脈を閉塞させることで生じる脳梗塞です。「心原性脳塞栓症」を引き起こす原因になります。

脳梗塞の種類

前項で触れたとおり、脳梗塞は大きく3つの種類に分類可能です。

  • アテローム血栓性脳梗塞
  • ラクナ梗塞
  • 心原性脳塞栓症

そのほか、原因不明で引き起こされる脳梗塞が25%と、その他の理由で引き起こされる脳梗塞が5%存在しています。

ここからは、脳梗塞のおもな種類について詳しく見ていきましょう。

アテローム血栓性脳梗塞

アテローム血栓性脳梗塞は、脳梗塞のうち25%を占めています。

この脳梗塞は、脳内の比較的太い血管が動脈硬化によってゆっくりと極小化され、血栓が形成されて閉塞してしまう疾患です。発症時の症状は重篤でないケースが多いですが、徐々に進行して悪化していく点が特徴的です。治療の際は、抗血小板薬を投与します。

欧米に多いタイプの脳梗塞でしたが、欧米型の食生活を送る人が増えてきた現代の日本でも、患者数が増えてきています。高血圧や高脂血症、糖尿病などを抱える人は、動脈硬化を引き起こしやすいため注意が必要です。

睡眠中や起床時など安静時に発症しやすい傾向があり、言語障害や片麻痺の症状が現れやすいです。

ラクナ梗塞

ラクナ梗塞も、脳梗塞のうち25%を占める脳梗塞の種類です。

脳の深部にある細い血管が詰まることで引き起こされる小さな脳梗塞のことで、無症状の微小梗塞が多発しやすい傾向にあります。この場合も、抗血小板薬を投与して治療します。

ラクナ梗塞は、高血圧の持続や脂質異常症、糖尿病や喫煙などによる血管壁の変性がおもな原因です。比較的ゆるやかに症状が進行していくことが多く、回復も早いと言われています。

起床時に手足の脱力感やしびれがある、言葉が話しにくくなるといった症状が出やすいため、心当たりがある場合は早めの受診をおすすめします。

心原性脳塞栓症

心原性脳塞栓症は、脳梗塞のうち20%を占める脳梗塞の種類です。

心臓にできた血栓の一部が剥がれて、脳に塞栓することで生じる脳梗塞です。ワルファリン、DOACを投与して治療します。

心房細動や不整脈、心臓弁膜症などの心臓疾患を持っていると発症しやすい傾向にあります。狭窄のない血管がいきなり詰まってしまうため、突然重篤な症状が生じる点に注意しましょう。

詰まってから数時間以内であれば、症状が自然に回復することもあります。ただし、再び血液が流れることで出血する「出血性梗塞」が生じやすく、神経症状を悪化させる危険性があるため、気をつけて経過を観察することが重要です。

脳梗塞の後遺症として考えられる症状

脳梗塞が起きると脳の細胞がダメージを負ってしまうため、適切に治療しても後遺症が残ってしまうことがあります。脳梗塞は症状や治療法だけではなく、後遺症についての知識をつけることも大切です。

ここからは、脳梗塞の後遺症として考えられる症状を紹介します。

運動障害

運動障害は体の左右片方に起こりやすいことから、「片麻痺」と呼ばれることもあります。手足が細かく動かせないなどの軽度なものから、手足が動かなくなってしまう重篤なものまで、幅広い症状が存在しています。

また、小脳がダメージを受けると体のバランス感覚が狂い、立っていられなくなったり着席時も体がゆらゆら揺れたりしてしまう症状にも注意が必要です。めまいが残り、日常生活に支障をきたすことも珍しくはありません。

感覚障害

感覚障害は、知覚に異常をきたしたり感覚の鈍麻が生じたりと、感覚神経の異常が生じてしまう障害のことを指します。症状としては、以下のようなものが出現しやすいです。

  • 異常感覚:しびれやじんじんした感覚が続く
  • 感覚過敏:ニオイや音、味覚や触覚などを過剰に感じる
  • 錯感覚:他から触られたときの刺激とは違う、ピリピリ感や痛みなどを感じる
  • 神経痛:末梢神経が刺激されることで生じる痛みが生じる
  • 感覚脱失:五感が鈍感になる
  • 感覚鈍麻:五感が敏感になりすぎる

感覚障害は運動機能や基本動作の阻害、死亡率の増加、バランスの低下による転倒の増加などを引き起こすため、リハビリで改善することが求められます。

その他の症状

脳梗塞の後遺症は、上記以外にも多く存在しています。

  • 視野障害:物が二重に見える複視、視野の左右どちらかが見えなくなる半盲、視野が欠ける障害など
  • 構音障害・失語症:思ったとおりに話せなくなる障害
  • 高次機能障害:思考や記憶、学習が難しくなる脳の障害
  • 嚥下障害:運動障害や感覚障害により、食べ物を飲み込めなくなる障害
  • 排尿障害:頻尿や失禁が起こりやすくなる障害
  • 神経症状:認知症やうつ症状、感情障害など

ダメージを受けた脳の位置によって、生じる後遺症はさまざまです。後遺症の内容や状態に合わせ、適切なリハビリを行うことが非常に重要です。

脳梗塞後遺症は早期のリハビリが重要

脳梗塞の後遺症リスクを低減するためには、できるだけ早期からリハビリを開始することが欠かせません

先述したように、患者が抱える悩みによって必要なリハビリ内容は異なります。医師と相談しながら、「飲み込み」「手専門」「動き全般」「QOLを高めるためのIATL(料理洗濯買い物)」など、行うべきリハビリを見極めていきましょう。

ここでは、時期ごとに行われるリハビリの内容について紹介します。

急性期のリハビリ

脳梗塞は「一週間が山」ともいわれるように、発症してから数日〜2週間程度の急性期は、症状の変化がもっとも大きい時期です。この時点では、バイタルサインや意識、麻痺の有無や感覚障害、高次脳機能や嚥下機能を注意して評価していきます。

意識障害はJCSやGCSという評価基準を用いるのが一般的で、麻痺はBRSやMMTで評価していきます。嚥下機能障害に対しては、急性期から枕を高くしておき、嚥下機能の可動域維持を開始することが大切です。

  • ※JCS:日本で主に使用される意識障害の深度分類
  • ※GCS:世界的に広く使用される評価分類
  • ※BRS:運動障害(片麻痺)の回復過程をステージ化評価法
  • ※MMT:筋力が低下しているかを徒手的に評価する検査法

脳卒中片麻痺がある場合は、病巣の対側にある上肢を屈曲位、下肢を伸展位にするWernicke-Mann姿勢をとることが多いです。クッションやタオル、装具などを用いて適切なポジショニングを行い、関節可動域訓練を行います。脳浮腫による意識低下や麻痺進行がなければ、離床を促して座位訓練や車椅子移乗のリハビリも行っていきましょう。

脳梗塞の発症後24時間以内に座位・立位を開始しても、死亡するリスクは増加しないと考えられています。

参照:脳卒中リハビリテーションの進め方

可能な限り積極的にリハビリをして、後遺症を減らす取り組みを進めていくことが重要です。

回復期のリハビリ

回復期のリハビリは、機能障害や能力低下、環境設定を介入目標として行います。この時点のリハビリ内容によって、脳梗塞後の後遺症が改善する可能性は十分に考えられます。

おもに行われるのは、運動麻痺、失語症、失調や構音障害、嚥下障害、失語、半側空間無視、記憶障害など高次脳機能障害に対するリハビリです。加えて、麻痺などによって生じた食事、移乗、整容、トイレ、入浴、更衣、排便、排尿などのADL動作の練習も行います。

在宅復帰に向けて住宅への手すり設置、段差解消などの環境設定を行い、在宅復帰後のサポートも進めていきましょう。

維持期のリハビリ

維持期は、排尿障害(脳卒中において30~40%に生じる)、嚥下機能障害、関節変形・拘縮などの症状が出やすいです。

日常生活動作(食事の用意や片付け、掃除、買い物など)の改善がもっとも重要な時期なので、根気強くリハビリを行っていきましょう

患者様やご家族様は、リハビリ専門職のスタッフや関連職と連携し、家族の介護負担の評価や助言、関わり方などのアドバイスをもらいながらアプローチを十分に検討していきます。

維持期の訪問リハビリでは、以下のような内容が行われます。

  • 関節可動域訓練や筋力増強訓練
  • 基本動作の評価・訓練
  • ADL、IADL訓練
  • 介護方法の指導
  • ホームプログラム・自主トレーニングの指導
  • 生活環境整備
  • 生活範囲の拡大及び社会参加の促進

リハビリスタッフが障害者の自宅に訪問し、実際の生活の場においてADLの維持向上を計ることが、維持期のおもなリハビリ内容です。

原疾患の情報を含めてリスク管理を行い、階段昇降や歩行、トイレや入浴、転倒回数の減少のリハビリ、必要であれば電動車椅子の導入なども検討します。失語症や構音障害がある場合は、STのサポートも受けながらリハビリをしていきましょう。

生活環境整備の際は、狭い廊下や出入り口に対して改修業者による家屋評価を行います。介護用ベッド、車椅子、シャワー、シャワーチェア、手すりなどが必要になることが多いため、必要に応じて整備していきましょう。段差がある場合はステップや手すりを設置し、トイレはポータブルトイレの使用を検討してもいいかもしれません。もし、ご自宅での入浴が困難な場合は、デイサービスを利用しましょう。

生活範囲を広るために、社会参加の機会を増やすデイケア、デイサービスを活用することも重要です。

デイケアにはリハビリのセラピストが在住しているため、社会的交流を楽しみながら機能訓練を進められるでしょう。またデイサービスでは、レクリエーションや入浴などを行いながらリハビリを行えます。

維持期は医療経済的な負担が大きな課題となる時期であるため、利用できる補助制度などについては専門家としっかりと相談してください

梅本ホームクリニックでは、24時間365日いつでも連絡相談を受け付けていますので、この機会にぜひ無料でご登録ください。

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脳梗塞後遺症のリハビリにかかる費用

厚生労働省が定める脳梗塞の後遺症に必要なリハビリの費用は、脳血管リハビリテーション料(Ⅰ)の場合は1単位20点で245点、(Ⅱ)の場合は1単位200点、(Ⅲ)の場合は1単位100点です。

なお、手術や急な憎悪から30日以内に行ったリハビリの場合は、30点が加算になります。1点あたり10円で計算されるため、245点では2,450円の費用がかかることになります。

回復期は1日に6~9単位のリハビリを行うため、単純計算をすると14,700~22,050円の費用が必要です。回復病棟の入院日数を3か月だと仮定すると、合計で200万円程度の費用がかかる計算になるでしょう。さらに、ベッド代や食事代、薬代が別途で必要となります。

ただし、日本には医療保険制度があるため、費用の全額を負担する必要はありません。原則は3割、70~75歳未満の人は2~3割、75歳以上の後期高齢者医療制度の被保険者は1~3割の負担で済むため、実際は20~60万円の費用負担となります。

リハビリ生活で意識するべきこと

リハビリ生活を送る際は、誤嚥性肺炎を予防するために口腔ケアを行って、口腔衛生を維持するようにしましょう。高齢者や嚥下障害がある患者様は、飲み物や食べ物が誤って気管に入りやすく、その際に口腔内の細菌が肺に入りやすい傾向にあるためです。

とくに65歳以上の高齢者になると、肺炎による死亡率が一気に高くなる傾向にあります。リハビリ生活を送るときは口腔ケアで口内細菌を減らし、肺炎のリスクを下げましょう。

梅本ホームクリニックは、脳梗塞後遺症のリハビリをサポートいたします

脳梗塞には3つの種類があり、それぞれの種類や症状の進行度合いによって後遺症が生じることがあります。症状や後遺症、リハビリの内容をしっかりと知って、適切な対処ができるようにすることが重要です。

食生活の欧米化により、脳梗塞の危険因子である高LDLコレステロール血症や糖尿病、高血圧が増加している現代では、食事や運動が予防につながると考えられます。また脳梗塞の予防には、禁煙や大量飲酒、肥満の改善が効果的だと考えられています。日頃から意識して、脳梗塞を予防できる生活を送っていきましょう。

梅本ホームクリニックは、脳梗塞の後遺症に対する在宅医療やリハビリを提供しております。患者様が後遺症を乗り越え、いきいきと生活できるようにサポートいたしますので、まずはお気軽にご相談ください。